中山佳尚 のバックアップ(No.3)
経歴 
- SEG化学科非常勤講師(大学生講師)。
- 北海道札幌南高校卒業。
- 東京大学理科三類入学、東京大学医学部医学科在籍。
授業 
- 化学FGHコースで高2化学FGを担当することが多い。
- 大学生講師ということで出講回数が限られている模様。
- 授業計画は、プリント・ノートを用いた講義と合間に挟まれる問題解説である。若いということもあり、高校生と価値観を共有しながら、自身の高校時代の話や大学であった面白い話などを雑談してくれる。授業進度は早めで生徒も集中力を必要とされるが、合間合間の緩い雑談が息抜きとなる。
- 授業スタイルは、講義内容をまとめたB4版のプリント、ノートを行き来していくというもの。授業初回で授業方針を毎回提示なさる。プリントでは「高校生として最低限理解しておくべき内容」を勉強し、ノートを使いながら補足していくとのこと。その後、関連範囲の発展的内容(多くは数学や物理を背景した発展事項であるが、生物学の背景がある興味深い題材を解説されることもある。後述。)をノートで授業される。
- プリントのおかげもあり、板書量はそこまで多くない。ノートを取るのが億劫な生徒でも、それほど気にならない程度である(実際、板書量が売りの阿部太朗先生から逃げてきた生徒も一定数いる)。
- しかしながら、実際に復習をしてみると板書量の割に解説されている内容が多い。特に、高校範囲の内容ながらも、図を用いて色々な観点から補足されているので、一つの内容についても深く理解できるように設計されている。発展的内容についても、数学や物理の進度を考慮し、イメージや簡略化した補足(「SEGの数学や物理の先生にこんなテキトーなこと言ったら怒られるから内緒ね?」)をしてくださる。
- 板書レイアウトは白・赤・黄の3色。字は大きな丸文字で見やすい。図も、生徒が自習や試験本番で真似できるようなシンプルなものでわかりやすい。イラストはあまり上手ではないようである(後述)が、授業内容に関わる部分ではないので問題はなさそう。
- プリントは高校化学の必須事項を図・例題・解説を盛り込みまとめたオリジナル教科書に相当している。授業では、「高校生として最低限理解しておいてほしい内容はプリントにまとめてある」と何度も強調されている。多数の明快な図を用いながら充実した説明が載っており、プリントだけでも十分勉強できるような質の高いものである。
- 授業では、まずプリントを用いながら高校化学の重要事項について説明が進んでいく。この際、プリントに載っている図を板書し、それに書き込む形で解説する。解説内容はおおよそプリントの内容と同じであるが、プリントでは文章で説明されているところを端的に補足してくれるため、授業内での理解や授業後の復習に大変効果的である。この点について、「最低でも一度くらいは手を動かしてお絵描きしながら勉強したほうが、イメージがわきやすくて力になる」とおっしゃっていた。
- プリントの補足解説では、プリントには載っていない関連発展事項や、思考力が試される問いかけが行われる。この問いかけは大抵初学の高校生には難しいが、解説中の内容と想像力・発想力を使うことで答えられるものになっている。「マニアックな知識を身につけるオタクになるのも良いが、みんなが知ってる知識を使って違った観点から頭を使える人になれると、よく勉強してるね、という感じ」ともおっしゃっていた。
- この問いかけについては、ノートに書かせる場合が多い。この際、「なんでもいいしキーワードだけでもいいし的外れでもなんでもいいから、とにかくなんか考えたり思ったことを書いて」と毎回強調される。「書かないよりは間違える方がマシ。書かないは何もしてないのと同じ」と付け加えられる。
- とは言っても、書かないからといって指摘を受けたりすることはない。何かを書いておくと、巡回中にコメントをくれたり、正解していると「いいねえ!」などと声をかけてくださる。
- ちなみに、模試や試験・過去問などで演習をし始めると、この問いかけと類似した問題に出会うことがあり、これについても「時たま試験などで題材になることもあるから」と補足されている。
- プリントには例題と講義問題が収録されている。例題は、初学の段階から身につけていきたい典型問題、講義問題は授業範囲ごとに2問程度準備されている本格的な問題である。
- 例題は解答解説ともにプリントに載っており、必要性・重要性の高いものについては授業内で解説してくださる。授業時間の都合上、解説が省略される問題もある。高校の実力試験や模試でよく出題されるような典型的な問題がほとんどであり、復習の際に必ずできるようにしておきたい。「化学の勉強は、理解すべきことを理解し、典型的な問題は繰り返し解いてスラスラできるようにしておくのが基本」とおっしゃっていた。
- 講義問題は、次回の授業までに生徒に予習させ、講義内で解説したのち、生徒の予習ノートを回収する宿題形式。とは言っても、提出を義務として要求する雰囲気ではなく、提出するとチェックしてくれるという感じ。生徒が忘れたことを謝ると、「いいよいいよ、次持っておいで、ありがとう」と優しく対応されている。
- 講義問題は毎回行われるものではなく、ある程度まとまりのあるセクションが終わったら復習として設定されている様子。
- なんと言ってもこの講義問題解説は先生の見どころの一つである。授業で扱った基礎事項を改めて確認しながら、思考力を必要とする考察問題や計算問題について解説を行う。普段の講義でも図を描いて勉強することの重要性を強調されているが、そのありがたみは問題解説で実感される。問題の状況をシンプルな図を使って整理し、わかっていることと未知数を書き込む。その上で、一本の式を立式するというスタイルで、試験答案にもそのまま応用できる実戦的なものである。最初から的確な図を描くのは難しいが、「まずは僕の図を真似て問題集とか解いてみて、完璧にできるようになったら今度は自分なりのやりやすいアレンジを入れてみて」とのこと。
- 解説授業では、自分の予習ノートになぜ間違ったのか?、どうすれば正解できたか?、という反省をメモしておくようにと指示される。回収する目的は、この反省点に対しコメントをつけることだそうで、「化学の勉強に限らず、人として、自分のできないところを自覚して改善できるというのは大事なこと」とおっしゃる。
- とはいえ、たとえば説明問題の添削や、計算過程の添削、別の解法に関する妥当性もコメントしてくださる。
- ノートを用いた発展講義では、かなり深い内容まで扱われる。理論では量子化学や熱力学、反応速度論の解析、複雑平衡の解析などを題材とされる。無機では理論を背景とした軌道の考察や、錯体の考察、金属有機化学などを扱う。有機化学ではフロンティア軌道論や反応機構や人名反応、最新の研究トピックスなどを説明する。内容としてはかなり難度の高いものであるが、身近な例を使ったり、計算過程・数学事項の補足などをこまめに行ってくれるので、説明についていくことは可能である。特に難しい部分については、途中で理解できているかどうかを挙手させて確認してくださる。
- このような内容の過程でも、生徒に対して考察させることは欠かせない。プリントの内容やこれまで板書した計算過程などに注目させ、なるべく自力で答えを導けるような考察を投げかけてくださる。高校生とは思えない内容に対し、自分で考察ができるという瞬間の全能感がある。「趣味で授業しているわけではないので、発展的内容でも無理なく考察の価値があり試験の題材となったり、大学に入ってからの助けになるように選んでいるつもり」とのこと。
- 有機化学では、SEG化学科の伝統から逸れず電子の振る舞いを重視した反応理論の解説を行う。しかしながら、授業構成は特徴的である。置換・付加など有機反応全体を反応系統ごとに分けて授業する他の先生方とは異なり、教科書・問題集的な物質区分で授業される。その理由として、「学校の副教材とか重要問題集で復習するときに、セクションがわけわかんなくなるじゃん」とのこと。
- プリントには有機反応が見やすくまとめられており、補足説明も充実している。授業ではこれらを抜粋して印象付けるとともに、補足として電子に注目した反応機構の説明を行なっている。反応機構と電子の振る舞いがわかりやすいように、構造式中に電子の動きや電荷の変化を丁寧に書き込み整理していくスタイルである。
- プリントの例題を用いて、異性体の書き出し方が説明されるが、非常に使いやすい手法である。「異性体の書き出しは苦手とする生徒が多いが、テキトーに書き出すというものでなく決まった方法があるので訓練するだけ」とのこと。
- 講義問題では、反応に関する知識の復習もしながら実践的な構造決定の手法について解説される。これも非常に実戦的であり、その明快さには目を見張るものがある。問題の題材となっている研究背景(NMRやクリックケミストリーなど)についても歴史的背景や現在の研究情勢などについて雑談してくれる。特にNMRは師の研究経験から勉強する機会があったとのことで、発展講義の中でも詳しく解説される。
- 発展講義では、高校有機を土台に、電子論をベースとした反応機構の考察や人名反応を扱う。生命有機化学やフロンティア軌道論、クリックケミストリーなどの最近の研究トピックス、NMRなど有機合成化学における基盤技術の解説などもなされる。「どれも高校生として必須ではないが、入試問題の題材となりつつあり、大学でも理系に進学する限り必ず学んだり、実習や研究に参加する機会のあるテーマ」とのこと。
- 授業ではフィードバックシートという、生徒自身の一週間の振り返りや来週の目標、授業への改善点や雑談・質問を自由に書いて提出できるものが毎週配られ、授業最後に回収される。「質問に来るのが苦手な生徒でも自由に相談や雑談しやすいように」とのことで、次の授業で丁寧に返事を書いて返却してくださる。これにより、生徒の状況を把握しおいて行かないような工夫がなされている。
- 授業の質問、進路・学校の相談、部活や休日などの雑談など、何を書いても親身な返信をもらえる。師について聞いてみることも可能で、師のプライベートなどを知ることも可能である。
人物 
- 基本的な授業方針として、「高校生として理解すべきことをしっかりと身につけながら、思考・考察をできるようになってほしい」とのことである。また、「高校生の最終目標はあくまで試験に合格することであり、その過程で発展的な知識を身につけたりしてほしい」とのことで、学問的な体系を重視するSEG化学科とは少し方針を異とする講師である。
- とはいうものの、化学を学問として学ぶことを大切にされており、 SEGの主義主張を共有していることは想像に難くない。思想の方向性としては、同じくSEG化学科講師の吉久寛先生に近い部分もあるかもしれない。逆に阿部太朗先生のように、理論・無機・有機を学問的体系として一本の筋で講義される阿部太朗先生とは授業の雰囲気もかなり違うと思われる。さまざまな目的を持って受講する生徒にとって、師の授業はレベル・好みを含めて万人受けの傾向があると思われる。
- 高3生の後期テストゼミの採点・添削も担当しているようで、高2生の授業ではテストでよくある間違いについて注意換気される。「来年みんなはこういうミスしないでね」「まあでも、結局みんな間違っちゃうんだけどね…」などとおっしゃり、悲しんでいる様子。
- SEGのOBではなく、学生講師としては珍しいタイプ。
- 生徒が話しかけやすい気さくな雰囲気。どんな相談や質問にも乗ってくれる。おしゃべりにも付き合ってくれる。「教え子と仲良く授業したりおしゃべりしたりできるから、講師は趣味の一つでもある」とおっしゃっている。
- 質問対応はとても丁寧。どんなに初歩的なことでも、授業内容を振り返りながらわかるまで付き合ってくれる。持参の問題集なども一緒に考えて不明点を解説してくださる。添削などをお願いすると、来週までにきちんと見ておいてくれる。
- 進路の相談や模試の成績など、化学科講師の範囲を超えた相談にも、自身の経験などを交えながら親身に答えてくれる。
- 師自身が医学部生ということもあり、医学部入試に関する話題や、医学部生の生活、医学部の授業などについて話を聞ける機会が多い。医学部受験を考えている生徒はぜひ気軽に相談してみるとよい。授業でも、医学部の入試問題形式や、出題傾向について触れられる機会がある。
- 高校時代には化学の実験をたくさん経験する機会があったそうで、授業でも実験の方法やコツ、失敗例などについて経験豊かな雑談をなさる。
- 大学入学以来医学系の基礎研究をされているとのこと。詳細な研究テーマは不明であるが、幅広い生物種に関するトピックスや実験手法に関する手技、豊富な実験経験などから、かなり熱心に研究されているようである。「ありがたいことにいろんな先生方から勉強させてもらえる機会があって、幅広く知識や技能を身につけられた」とのこと。
- 高校時代には物理・化学をメインに、生物の勉強もされていたそうで、この影響もあるだろう。実際、受験科目は物理化学であったにも関わらず、生物選択の生徒の相談にも乗っている。
- 東京出版「大学への数学」2021年8月号「東京大学理科3類への道」にて、受験勉強のメンタルについて寄稿されている。